第15話「損害賠償額の支払基準と請求額の算出」

ここまで、損害賠償の内容について見てきました。
いよいよこれから説明に沿って、損害賠償請求額を算出してください。

尚、請求額算出にあたり、採用する基準は、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)、いわゆる裁判基準です。(同様な基準を示す「青い本」がありますが、こちらは大阪地方裁判所の判例に基づいており、全国的には「赤い本」の方を参考にするのが一般的になっています。)

本書の説明で損害賠償請求額を算出することはできますが、より詳細な根拠の確認を希望する場合は、下記ホームページより「赤い本」を購入することをお勧めします。

「財団法人日弁連交通事故相談センター」はこちら

一方、保険会社が提示してくる賠償額の基準となっているのは、基本的に自賠責基準です。

「自賠責保険金支払基準」はこちら

★実際に算出する場合は、kindle本添付資料「損害賠償請求額計算表」を参考にして算出してください。

傷害保険金

①治療費
実費です。保険会社が直接支払っている場合、「診断書」「診療報酬明細書」「施術証明書」「領収証」等は保険会社に送られていますので、賠償額提示を依頼した時に、同時に、それらの書類のコピーを送付してくれるように依頼します。

また、別途健康保険の利用による治療を受け、自費負担をしている場合は、保管してあった「領収証」合計額を加算します。

②付添看護料 *「付添看護自認書」はこちら
・看護婦や家政婦に依頼した場合:支払った実費(「領収証」合計額)

・近親者が看護した場合
6500円×入院日数+3300円×通院日数
被害者が12歳以上の場合は、「付添看護自認書」を作成して添付します。12歳未満の場合は不要です。
当然ですが、事実に沿って算出します。

③入院雑費
1500円×入院日数

④通院交通費 *「通院交通費明細書」はこちら
電車・バス・タクシー代実費+自家用車ガソリン代
自家用車ガソリン代=15円×片道距離(km)×2×通院日数
タクシー代は「領収証」が必要です。
「通院交通費明細書」を作成して添付します。

⑤休業損害 *「休業損害証明書」はこちら
治療期間中に請求して受け取っている場合は、既受取合計額になります。

算出する場合は、以下の通りです。

1)給与所得者
前項で説明した通りです。

2)事業所得者
日額=(前年申告所得+固定費)÷365
損害額=日額×休業日数
固定費:租税公課・地代家賃・従業員給料・減価償却費・損害保険料等
休業日数:実治療日数×2と治療期間日数の少ない方

3)会社役員
日額=前年年収÷365×労務対価割合
損害額=日額×休業日数
労務対価割合:仕事内容に占める一従業員としての割合であり、営業日に出勤して定例的に行っていた一従業員としての業務の割合を判断して決めます。中小零細企業の場合、80~100%が実状に合っています。
休業日数:実治療日数×2と治療期間日数の少ない方

4)家事従事者
日額=賃金センサス女子全年齢平均年収÷365

*「賃金センサス年収額表」参照
平成24年女子全年齢平均年収で試算すると、3,547,200÷365=9,718円です。
損害額=日額×休業日数
休業日数:実治療日数×2と治療期間日数の少ない方

*パート労働者の休業損害額について
主婦でパート労働者である場合、実際の休業による減収額ではなく、上記に従って計算します。
例えば、治療期間90日間で実治療日数60日の場合、60×2>90ですから休業日数は90日とします。(逆に40×2<90では80日になります。)
この場合は、9,718円×90=874,620円が休業損害です。

5)失業者
日額=賃金センサス男女別年齢別平均年収×0.8÷365
損害額=日額×実治療日数

6)学生・18歳未満の未就労者
事故前3ヶ月間にアルバイト収入があった場合
日額=3ヶ月間のアルバイト収入÷90
損害額=日額×休業日数
休業日数:実治療日数×2と治療期間日数の少ない方

⑥入通院慰謝料
1)治療期間及び実治療日数把握
イ治療期間:治療初日~治療終了日(症状固定日)の日数
ロ入院日数
ハ通院実日数
入院と通院の記録から、イ~ハを求めます。
「ハ通院実日数」は慰謝料算出では使用しませんが、休業損害算出に必要です。

2)入通院慰謝料表
入通院慰謝料について、「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)、いわゆる裁判基準の算出の基礎金額一覧表(別表Ⅰ~Ⅱ)が公表されています。

*資料「交通事故慰謝料表」参照
・別表Ⅰ:通常はこちらを使用します。
・別表Ⅱ:頚椎捻挫(ムチウチ)で他覚症状がない場合に使用します。

15ヶ月を超える場合は、14ヶ月と15ヶ月の差額を、前月額に加算していきます。

3)算出方法
・入院慰謝料
ロ入院日数が「何ヶ月+何日」かを求めます。
何ヶ月=ロ÷30の整数部分  何日=ロ-30×何ヶ月
別表Ⅰの入院何ヶ月の該当金額(1行目)を確認し、何+1ヶ月の該当金額との差額を30で除して何日を乗じます。
入院慰謝料=入院何ヶ月の該当金額+何日分計算額

・通院慰謝料
イ治療期間が「何ヶ月+何日」かを求めます。(ステップ1)
何ヶ月=イ÷30の整数部分  何日=イ-30×何ヶ月
別表Ⅰの通院何ヶ月の該当金額(1列目)を確認し、何+1ヶ月の該当金額との差額を30で除して何日を乗じます。
治療期間通院慰謝料=通院何ヶ月の該当金額+何日分計算額
同様に、ロ入院日数を「通院」に置き換えて金額を求めます。(ステップ2)
通院慰謝料=治療期間通院慰謝料(ステップ1)-入院日数通院慰謝料(ステップ2)

・入通院慰謝料
入通院慰謝料=入院慰謝料+通院慰謝料

算出例 *別表Ⅰ適用
イ治療期間:220日=7ヶ月+10日
ロ入院日数:58日=1ヶ月+28日
ハ通院実日数:73日

・入院慰謝料
入院慰謝料=530,000+(1,010,000-530,000)÷30×28=978,000

・通院慰謝料
治療期間通院慰謝料=1,240,000+(1,320,000-1,240,000)÷30×10=1,266,000
入院日数通院慰謝料=280,000+(520,000-280,000)÷30×28=504,000
通院慰謝料=1,266,000-504,000=762,000

・入通院慰謝料
入通院慰謝料=978,000+762,000=1,740,000

*増額請求ができる場合
傷害の部位・程度によって、さらに、生死が危ぶまれる状態が継続した、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被った、手術を繰り返した場合などは、別途20~30%増額して請求できます。

⑦その他
実費です。「領収証」が必要です。


後遺障害保険金 

①後遺障害逸失利益
年収・給与所得者
35歳以上:前年年収または賃金センサス男女別年齢別平均年収いずれか高い方・事業所得者 事業所得者の場合、申告所得が実収入額に比べて極端に低かったり、複合的な収入内容であったりしますので、「所得申告書」以外の立証資料等が必要となります。

前年年収×労務対価割合または賃金センサス男女別年齢別平均年収の高い方
賃金センサス女子全年齢平均年収 失業前1年間の収入または賃金センサス男女別年齢別平均年収いずれか高い方
賃金センサス男女別全年齢平均年収 症状固定時の年度データもしくは、未公表の場合はその前年データを採用します。
労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を、それぞれ所定の一覧表より選びます。

・給与所得者(パート労働者)、男性、43歳・後遺障害等級12級:右膝関節可動域制限・労働能力喪失期間:67-43=24年間・後遺障害逸失利益=6,190,300×0.14×13.7986=11,958,446円
本書の目的は、交通人身事故被害者である購入者の方に、裁判基準の損害賠償請求額の算出方法を説明することです。
当然のことながら、被害者は高く請求し、賠償する保険会社は低く査定します。
上記算出例では、転職を繰り返していた被害者の年収の査定が問題となり、一時的に努めていたアルバイト先の収入は年間300万円程度でしたが、転職の意思があることから男子年齢別平均年収619万300円を採用しました。
本書の説明は、過去認められた範囲の高い基準で請求額を算出する方法です。

結果的に決定した賠償額は、男子全年齢平均年収529万8200円の80%で、423万8560円でした。したがって、受け取った金額は、4,238,560×0.14×13.7986=8,188,067円でした。
そして、その傾向が最も顕著なのが逸失利益であり、争点の多くは、算出に使用する年収額と労働能力喪失期間になります。
また、実際の裁判や示談交渉の場では、双方から様々な角度で主張が展開されます。

*請求額と実際の賠償額の違い
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:13.7986
・労働能力喪失率:14%
・年収:平成21年賃金センサス男女別年齢別平均年収619万300円

算出例

2)算出方法
*賃金センサスデータの採用年度
・学生・18歳未満の未就労者
・失業者
・家事従事者
・会社役員
前年申告所得または賃金センサス男女別年齢別平均年収いずれか高い方
前年年収の証明には「源泉徴収票」が必要です。
35歳未満:前年年収または賃金センサス男女別全年齢平均年収いずれか高い方

*資料「賃金センサス年収額表」参照
つまり、高い基準を出発点として交渉を進めることを目的としていることを、ご理解ください。したがって、算出請求額は、正規金額として正しく、示談額相当額を示す訳ではなく、あくまで参考額であることをご了承ください。

②後遺障害慰謝料
1)被害者本人の後遺障害慰謝料

*資料「交通事故慰謝料表」参照

2)近親者の慰謝料
被害者が重度の後遺症をもたらす傷害を負った場合、被害者の近親者についても独自の慰謝料請求が請求できます。その場合、概ね被害者本人の慰謝料額の10~30%程度が請求可能です。

*慰謝料の増額請求
以下の場合は増額請求ができます。
・加害者の故意もしくは重過失または著しく不誠実な態度
無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、信号無視など、非社会的性質のもの、もしくは、責任転嫁や侮蔑的言動などがあり、被害者や遺族の悲しみが倍加する場合。

・被扶養者が多数の場合
一家の柱である被害者が重い障害とか、死亡した場合で、被扶養者である妻の他、多数の子供がいれば、全体としての精神的苦痛の大きさを反映させます。

③介護料
医師の指示がある場合や症状の程度により将来的に必要がある場合に、付添介護費用や、付添介護に関係して要する費用を請求できます。
職業付添人費用は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円。付添に要する期間は、平均余命までの間。

死亡保険金 

①死亡逸失利益
年収、労働能力喪失期間については、後遺障害逸失利益と同じです。

・生活費控除率
イ一家の柱:被扶養者1人なら40%、2人以上なら30%
ロ女子:30%
ハ男子:50%

算出例
・無職(高校1年生)、女子、16歳
・年収:平成21年賃金センサス男女全年齢平均年収470万5700円
・労働能力喪失期間:67-18=49年間
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:16.4795
・生活費控除率:45%
・死亡逸失利益=4,705,700×(1-0.45)×16.4795=42,651,170円

②死亡慰謝料
イ一家の柱:2800万円
ロ母親、配偶者:2400万円
ハその他:2000~2200万円

③葬儀費
原則最高150万円、下回る場合は実費の額になります。
「領収証」等が必要です。

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