第17話「損害賠償請求前の確認とやるべきこと」

請求額を算出したら一刻も早く請求したい気持ちだと思いますが、「急いてはことを仕損じる。」と言いますので、もうしばらくお待ちください。

実は、請求前に確認すべきこととやるべきことがあるのです。
いずれもあなたの利益に直結する可能性がある重要事項です。

1.素因減額

あなたに既往症や持病もしくは関係する身体的特徴があった場合、保険会社は必ず症状悪化や後遺障害の遠因となっていることを理由に、医療費や逸失利益や慰謝料の減額を主張してくることでしょう。

これを、「素因減額」と言い、「体質的・身体的素因」と「心因的要因」に分類されます。

現状では、被害の大きさ(損害賠償額)との相当因果関係があるのかないのかによって、個別に判断されています。

いずれにしても、保険会社から素因減額を主張された場合は、受け入れる気がなければ、専門家(医師や弁護士)の力を必要とするでしょう。

2.過失相殺

被害者と加害者双方の過失の程度を具体的な数値割合で表したものを過失割合と言います。

公平性確保の観点から、過去の判例を参考に認定基準が作られています。具体的には、東京地方裁判所「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ)を参考にします。

判例タイムズには、事故形態の様々なパターン別に基本割合が設定され、合わせて、それぞれの修正要素として、「加算要素」「減算要素」が具体的なケース別に数値化されています。

よくあるのが、「減算要素」に該当していても、減算されないまま、説明もなく基本割合を押し付けられて、みすみす多額の賠償額を損するケースです。

被害者であるあなたは、先の「請求額計算表サンプル」で言えば、わずか過失10%でも190万円を上回る減額を強いられる訳ですので、必ず「減算要素」が該当しないかどうかを一度自分で確認しましょう。(サンプルで仮に過失割合が5%減算されれば、100万円近い請求増額に結び付きます。)

3.人身傷害保険金の請求

あなたに過失があり、かつ自分の保険へ人身傷害保険金の請求ができる場合は、第2章4項で説明したように、加害者側の保険会社に損害賠償請求をする前に、人身傷害保険金の請求をしてください。

つまり、順番は、自賠責保険の被害者請求をして、それから人身傷害保険金の請求をします。(繰り返しになるので、ここではなぜそうするのかは説明しません。)

また、人身傷害保険金の請求をする上で、注意しなければならないこと、それは「先行全額払」にせずに、過失部分のみの人身傷害保険金を請求することです。

*自動車保険約款「人身傷害条項 第~条(損害額の決定)」
ほとんどの方は読んだことはないと思いますが、保険約款というのは、いざ“保険金請求”という段になって、突然重大な意味を持ちます。
どこの保険会社の約款であれ、「人身傷害条項(損害額の決定)」に、次の一文があります。

賠償義務者がある場合には、保険金請求者は、(1)の規定にかかわらず、当会社の同意を得て、区分ごとの算定金額の内、その賠償義務者に損害賠償すべき損害に係る部分を除いた金額のみを、当会社が保険金を支払うべき損害額として、当会社に請求することができます。

あなたは、この約款に書かれている被保険者の権利として、保険会社にその旨を伝えてください。そうすることによって、あなたは、人身傷害保険金を確保した上で、安心して加害者への損害賠償請求をすることができます。

また、このような過失部分のみの人身傷害保険金請求行為に対しては、「先行全額払」にしたい保険会社は当然嫌な顔をします。

しかし、これはあなた自身の権利(利益)を守るための行為であり、そのために避けられない対策です。あなたが権利(利益)を守らなくてよいならする必要はありませんが、そうではない筈です。

保険会社のやり方が契約者保護に立っていないことの方が問題であり、止むを得ない措置なのです。

4.損害賠償に関わる税金の扱い

(1)休業損害及び逸失利益算出における所得税の扱い
休業損害にしろ逸失利益にしろ、事故の被害者にならなければ本来得られた筈の収入額を損害として賠償を求める訳ですが、実際給与や報酬を受け取った場合の所得税は加味しませんでした。
このように、請求に当たり、所得税分を控除しなくてよいことになっています。

(2)賠償金を受け取った時の所得税の扱い
賠償金も、一般の損害保険金と同様、収入ではなく、発生した損害を埋め合わせる補償金という位置付けですから、無税です。

5.ムチウチ症等神経症の対策

ムチウチ症については、第3章で、基本的なことや重要なことは既に説明済みです。

ここでは、改めて本書の解説の根拠となっている東京三弁護士会交通事故処理委員会「ムチウチ症特別研究部会」から公表されている見解を紹介しておきます。

「医学的他覚所見のないムチウチ症」に関して、画像診断による「狭義の他覚的所見」のほか、理学的検査方法による理学的所見を合わせて「広義の他覚的所見」を認めるべきである。

さらに、労働能力喪失期間について、実情は、稼働期間の全体を通じて喪失を認めず、短期間に限定して認める傾向が続いているが、症状の長期化を考慮すれば、これまでより長期の期間を認定すべきである。

つまり、後遺障害認定申請において、画像検査以外の第3章で紹介しているような検査をしっかり受けて、その結果を基に診断書を書いてもらうことを弁護士会は推奨しています。

そうしないと、本来後遺障害として認定されて、補償を受けるべき被害者が救済されない結果となるからです。

また、労働能力喪失期間を、過去の慣例通りではなく、妥協せずに正当に請求することを推奨しています。

現状の12級で5~10年、14級で5年以下というのは、余りに低い損害額査定に過ぎないからです。

腰痛等の神経症状の方を含めて、是非こうしたアドバイスを生かして欲しいものです。

*追加アドバイス
説明し切れなかった点がありますので、付け加えます。

・とにかく、担当医に対しては、一貫した自覚症状を訴えてください。それによって、原因特定の必要性 → 検査の必要性 → 他覚所見という流れが形成されます。
・頭痛、眩暈、難聴は、外傷性ではないので、後遺障害の認定要因にはなりません。

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