第3話「入り口が広くて出口が狭い保険会社のドル箱商品、医療保険」

「入り口が広くて出口が狭い」とは、業界で使われる表現で、簡単に入れる保険は保険金支払いが渋いという意味です。
保険会社にとってこんな理想的な保険は他にないでしょう。
医療保険には、この手の商品として「無選択型」(誰でも入れる保険)と、「引受基準緩和型」という2種類のタイプが販売されています。
いずれも、私も含めて多くのアドバイザーが首をかしげる商品です。

さて、「無選択型医療保険」の主な特徴を列挙してみると次のようになります。
1.加入できる年齢は50~80歳
2.保険期間は5または10年更新型
3.保障期間は最大85歳で終了する
4.保険料は割高で、更新後にさらにアップ
5.90日の不填補期間がある(契約日から90日間は病気による入院・手術保険金は支給されない)
6.契約前及び不填補期間に発病した病気、またはこれらと医学上重要な関係がある病気の場合は、不填補期間経過後2年間は保険金は支給されない
7.1入院支払限度日数が短い(最大90日)

以上、これだけ制約があってそれでも加入する価値があるケースとはどういうケースなのか?少なくとも、私には説明ができません。

尚、「引受基準緩和型医療保険」については、保険金の支払対象・条件に関して明確でない要素があって、例えて言えば、高い料金を払って目的地と到着時間がはっきりしない飛行機に乗るような印象があります。
表現は違ってきますが、価値が”ない”ではなく、”分からない”ものにお金を払う理由もまた見付かりません。

それにしても医療保険のCMが多いことには驚くばかりです。病気の不安がない人はいないでしょうから、恐らく大多数の人が、「何かに入らなければいけない」という考えを否応なく持っているに違いありません。
これをいわゆる”洗脳”と言います。

洗脳された消費者は、冷静さを失い、宣伝文句に乗せられ、あるいは、勧められた内容の保険に加入します。
それがいかに馬鹿げたことかを客観的に、科学的に解明した本があります。タイトルは「販売員も知らない医療保険の確率」(永田宏)といい、光文社から出されています。

この本では様々な科学的分析を試みていますが、その中で最も真骨頂と言えるのが「配当率」です。
「配当率」、つまり支払った保険料に対してどれだけ還元されるか、回収できるか、その割合を示す数字です。

ここで、例として2種類ご紹介します。(例は2006年当時のものです。)
まず、10年間掛捨て医療保険アメリカンホーム「ライフサイズ入院プラス」

次に、終身医療保険アフラック「EVER」、設定を30歳で加入し、10~50年後に死亡した場合、死亡までに受け取った保険金を配当金としてそれまでに支払った保険料と比較します。

上記2例とも支払った保険料の積立金利を加味していませんので、もし金利を加味したら分母である支払総保険料が大きくなり、配当率は表記の数字より下がります。
結論から言えば、医療保険の配当率は概ね30~60%が実数だと言えるでしょう。(何と、保険料の40~70%は保険会社の取り分です!)

ところで、競馬、宝くじの配当率をご存知でしょうか?競馬が75%(協会取り分が25%)、宝くじが40%(運営側の取り分が60%)です。
何と、医療保険の配当率は競馬をはるかに下回り、宝くじ程度しかないことになります!

医療保険のCMが多い理由が分かったでしょうか?
あなたは、返ってくるかどうか分からない保険料を払い続けますか?それとも、確実に金利が上乗せされて返ってくる貯蓄をしますか?

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