第10話「後遺障害とは」

後遺障害とは、自動車事故により被った傷害がなおった時に、身体に残された障害を言います。また、「なおった時」とは、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても効果が期待できなくなった状態(症状固定)を言います。

言うまでもなく、後遺障害は、交通事故の損害賠償請求において、極めて大きい意味を持っています。被害者であるあなたが、事故から半年以上治療しても痛みや違和感が残っている、とりわけ、雨の日や特定の姿勢を取った時に痛みが出るような場合、その補償(なくならない痛みやストレスの代償は金銭でしか補えません。)をしてもらうには、後遺障害を認めてもらう以外ないからです。

したがって、あなたが、あなた自身の権利を守るために、これから説明する後遺障害に関係する内容を理解することは必須です。

言い換えれば、あなたが払わなければいけない代償に見合う賠償金を得ることができるかどうかは、あなたが後遺障害について理解し、適切な認定を受けた上で、合理的な方法で示談交渉ができるかどうかにかかっています。

本書の最も大きな役割は、後遺障害の補償請求を支えることです。


後遺障害認定

後遺障害の認定は、自動車事故の場合は、自賠責保険制度の中で行われます。(わが国には、もうひとつ労災制度の中に後遺障害認定があり、それぞれ独立して認定しています。)

自賠責保険の最終的な認定は、自賠責保険会社が行いますが、公平性を確保するため、「損害保険料率算出機構」に認定のための調査を委託しています。

「損害保険料率算出機構」では、「後遺障害診断書」をもとに、それまでの治療経過、X線写真、CT写真、MRI検査結果などの資料と顧問医の意見を参考に調査を行います。

  1. 認定申請方法
    認定申請の方法には、2通りあります。この2通りのどちらを採用するかは、運命の分かれ道です。絶対に!間違えないでください。

・事前認定
ここで一度思い出す必要がありますが、自動車保険は自賠責と任意保険の二重構造でした。そして、被害者としてのあなたを担当しているのは、加害者側の任意保険の担当者です。

ところが、後遺障害認定をするのは自賠責保険会社です。通常、自分で加入する任意保険に対して、車検制度と連動し、自動車整備工場が加入手続きをする自賠責保険は、任意保険とは直接の関係もないために、別々の保険会社になっているのが普通です。

それなのに、加害者側の任意保険会社は、あなたから申請書類を預り、自賠責保険会社に対して、自社であなたの後遺障害認定申請手続きをしようとします。

なぜなら、こうすることによって、自賠責の保険金は、示談交渉後に、任意保険会社から示談金額に含めてあなたに支払う「一括払い」ができるからです。

逆に言うと、申請から約1ヵ月後の認定結果が出た直後に、本来あなたが受け取る筈の後遺障害保険金を、示談が終了しない限りあなたは受け取ることができません。保険金受け取りを急ぎたいあなたは、示談交渉のペースを保険会社に握られる結果となります。

さらに、任意保険会社は、あなたから預かった申請書類に、自社の顧問医の意見書を添付して、あなたの後遺障害認定申請手続きをします。これは、あなたが認定を受ける上で、マイナスの影響をもたらします。

任意保険会社にとっては、あなたが後遺障害の認定を受けることによって、自社の支払負担が増すことは避けたいわけです。

この方法を「事前認定」と言います。任意保険会社は、もちろん「事前認定」を勧めますが、あなたには上記のような事情は説明しません。

また、任意保険会社の担当者が、あなたから申請書類を預ったままで、しばらく処理をせずに不要な時間が経過する場合もあります。

悪いことだらけの「事前認定」を、絶対しないように、注意してください!

・被害者請求
あなたがすべき後遺障害認定申請方法は、「被害者請求」です。

因みに、これから説明する後遺障害認定申請としての「被害者請求」は、後遺障害認定を取り、同時に、自賠責後遺障害保険金を受け取ることが目的です。したがって、自賠責傷害保険金の請求は、ここでは目的ではありません。

なぜなら、それまで任意保険会社が治療期間中の医療費を直接支払っている場合、自賠責傷害保険金は、任意保険会社が支払済みの医療費の回収が優先されるため、120万円の上限に達していれば、請求しても支払われないからです。

120万円を超える請求額については、どちらにしろ、示談交渉時に、損害賠償請求全体に含めて行うことになります。

ですから、ここでの説明内容は、自賠責保険ポータルサイトに紹介されているような、一般的な「被害者請求」の説明内容と異なりますので、予めことわっておきます。

「自賠責保険金請求方法、必要な書類」はこちら

a)必要書類
1. 自賠責保険支払請求書 「自賠責保険支払請求書」はこちら
通常、保険会社に用紙をもらいます。「交通事故証明書」に自賠責保険会社と自賠責保険証明書番号が記載されているので、それを確認して所定の欄に記入します。

2.印鑑登録証明書 3.診断書 4.診療報酬明細書

5.施術証明書
任意保険会社が治療期間中の医療費を直接支払っている場合、病院、整骨院は、任意保険会社に請求時に3~5の書類を提出済みであり、任意保険会社は負担した医療費を自賠責保険から回収するために、これらの書類を自賠責保険会社に提出します。

したがって、この場合、3~5を改めて提出する必要はありません。

健康保険、労災を利用した場合は、3.診断書、5.施術証明書をそれぞれの病院・整骨院に発行してもらいます。また、4.診療報酬明細書については、病院では再発行ができない事情があるため、健康保険組合(国保の場合は市長村)と労災にレセプト開示を依頼し、明細を転記して4.診療報酬明細書の代わりとします。

6.後遺障害診断書 「後遺障害診断書」はこちら
 通常、保険会社に用紙をもらいます。担当医師に作成を依頼し、用紙を渡しましょう。

7. X線写真、CT写真、MRI画像
受傷時と症状固定時(症状固定時での検査がなかった場合は、直近時)、及びその間の検査結果画像を病院から借り受け、提出します。

提出時に、返還を依頼する添え書きをしておきます。

8.住民票
被害者が未成年の子、または、専業主婦の場合、世帯主と同居家族全員が記載されたものが必要となります。

9.送り状
1~8の必要書類に「送り状」を添付しておきましょう。

「送り状」には、宛先、年月日、住所、氏名、電話番号、提出書類リストを記載した上で、以下の文言を付け加えておきます。

「以下の書類を提出し、自賠法16条に基づき被害者請求を行います。つきましては、手続きをよろしくお願い申し上げます。手続き完了後、画像は私宛にご返送お願いします。」

以上で「送り状」の完成です。

b)送付先
~保険会社(自賠責保険会社) 担当地区損害調査部門 自賠責保険係宛とします。送付記録と運送保険付きの宅急便を使います。

万が一、任意保険会社と自賠責保険会社が同一であっても、関係なく自賠責保険係宛に宅急便で送ります。任意保険会社の人身傷害担当に直接渡さないでください。

c)認定通知
調査及び認定作業が終了すると、自賠責保険会社から「後遺障害等級のご通知」が送られてきます。内容は、表紙(等級通知)と別紙(理由書)です。

d)自賠責後遺障害保険金
「認定通知」と同時に、「保険金支払い案内」が送られてきます。そして、3日以内には記載された「後遺障害保険金限度額」が振り込まれます。

「後遺障害等級表」はこちら
e)自賠法16条4、所要日数
自賠法16条4では、被害者請求がなされた時に、1)請求時の書面交付 2)支払時の書面交付 3)支払わない場合の書面交付を義務付けています。

通常1)に1週間後、2)または3)には40日後が目安となります。

(2)認定の要点
後遺障害認定を確保するためのポイントは、主に3つあります。

1)画像及び他の検査結果
障害の事実を客観的に証明する根拠の第一は画像になります。画像には、X線写真、CT写真、MRI画像がありますが、特に、X線写真には写らない微細な異常は、第7話で紹介した内容のMRI検査を受ける必要があります。

また、異常画像は12級では必須ですが、14級では必須ではありません。

*頚椎捻挫(ムチウチ症)の後遺障害の認定根拠

14級9号:局部に神経症状を残すもの
目立った他覚的所見が認められないが、神経系統の障害が医学的に推定されるもの。外傷性の画像所見は得られないが、自覚症状を説明する神経学的所見が認められるもの。

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
他覚的検査により神経系統の障害が証明されるもの。自覚症状に一致する外傷性の画像所見と、神経学的所見の両方が認められるもの。

上記の認定根拠に合致した神経学的検査を、担当医師にお願いして受けてください。そうすることによって、あなたは、払わなければならない代償(後遺障害)に見合う補償を受ける権利を確保することが可能となります。

・神経根造影検査
他覚的所見を見る為の最終的手段

・神経伝道速度検査
脳外科の専門、神経に異常がある場合伝道速度に異常が出る。

・スパーリングテスト
神経根の異常を観る。後方から頭を押さえて下方に圧迫すると神経根の出口が狭まり、痛みが走れば陽性となり神経学的所見となる。この痛みは放散痛(原因部位とかけ離れた所の痛み)となる。同様なテストにジャクソンテストがある。

・筋力検査
上腕二頭筋、三角筋に筋力低下が認められると頚椎の5番目6番目の神経根に異常があるとみる。

・筋萎縮検査
両腕をメジャーで測定。神経根圧迫によって上腕二頭筋、三角筋に異常がある場合筋肉の萎縮が出る。

・筋電図検査
筋の収縮に伴って発生する電気を測定、脳外科の専門。

・握力検査
首の痛みの原因が神経根の圧迫から来ている場合、握力に影響する。

2)自覚症状と画像及び他の検査結果の整合性
自覚症状は一貫性が重要であると共に、他覚的所見(画像及び他の検査結果)との整合性、すなわち、自覚症状の理由が他覚的所見との関係で説明できることが重要です。当然医師の所見においても、整合性が重要となります。

3)治療期間と入通院日数
一概に~日以上あればよいというものではありませんが、6ヶ月未満の治療期間と入通院日数の少なさは、認定上基本的に不利です。

6ヶ月以上の治療期間で、2日に1日以上の通院頻度が目安となります。

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