第6話「自分の自動車保険の内容確認」

突然ですが、ここで一旦損害賠償請求の説明を小休止します。

なぜなら、忘れない内に自分が加入している自動車保険の内容確認をして欲しいからです。契約内容によっては、あなたが受けられる補償を大きく左右します。

現実にあった話のひとつですが、以前ある方が追突事故に遭い、自分が加入している保険会社(代理店)に事故の連絡をしたら、「追突事故の場合は、相手方が100%悪いので、自分の保険からは出ません。」と説明されました。

ところが、その方が加入していた自動車保険には、「搭乗者傷害(部位・症状別払い)1000万円」が含まれており、「医療保険金」「後遺障害保険金」の両方の請求ができました。
保険会社(代理店)は嘘をついていたのです。

このように、自分が加入している自動車保険から受けられる補償があることを知らないと、本来もらえる筈の保険金をもらえない結果となり、3年の請求時効後は、後の祭りです。

事故に遭ったら、是非一度は自分の保険証券を確認してください。確認すべき内容は、以下の通りです。

搭乗者傷害保険
自分を含め搭乗者の傷害を補償する保険です。特徴は、普通の傷害保険同様“定額払い”であることです。
つまり、ケガによってかかった医療費や失った収入などの実損額に関係なく、死亡、後遺障害の等級、ケガの部位・症状、入院・通院日数などによって計算される定額が支払われます。

・死亡保険金
搭乗者が死亡の場合、一人につき設定保険金額を支払います。

・後遺障害保険金
死亡保険金×4~100%、死亡保険金額に後遺障害等級に応じた支払割合を乗じた額を支払います。

・部位・症状別払い医療保険金
入通院5日未満の場合一律1万円、5日以上の場合「部位・症状別保険金支払額表」の該当する金額を支払います。

各保険会社の支払基準には若干の差があり、インターネットにその比較が紹介されています。「搭乗者傷害保険の医療保険金の各損保差異(大手損保編)」はこちら

・入通院医療保険金
日額×入通院日数で算出した額を支払います。かつて標準だった支払い方法ですが、現在はオプションで一部残されているだけです。

人身傷害保険

ケガをしたことによって失われた利益(=発生した損害)は、通常は加害者が賠償責任を負うことは既に説明しました。

しかし、加害者とあなたの過失割合が100:0ではなく、あなたにも20%の過失がある(過失割合が80:20)場合は、あなた自身の損害の賠償は、加害者からはその80%しか行われません。
この加害者が賠償しないあなたの過失分について補償するのが、人身傷害保険です。

以上の説明から、人身傷害保険によって自分自身の過失分20%の補償を受けられ、結果的に損害は100%補償される、との結論が導かれます。
しかしながら、残念ですが事実は異なります。

それでは、その理由と対策を解説します。

*人身傷害保険の支払基準

分かりやすくするために、あなたの過失割合20%、裁判基準での損害額(本来もらえる金額)1000万円と設定して、説明します。

この場合、あなたは加害者に1000万×80%=800万円の賠償を求め、人身傷害保険で、1000万×20%=200万円請求すればいいことになります。

ところが、ここで支払基準の問題が浮上します。人身傷害保険の支払基準については、「約款」で確認できますが、一言で言えば自賠責保険に準じた額、裁判基準の半額未満というところです。

仮に半額とした場合、損害額自体が1000万ではなく500万円となりますので、計算上人身傷害保険金は、500万×20%=100万円となり、トータルは、賠償金800万円と合わせ900万円です。

確かに、賠償請求であれば裁判で争えますが、人身傷害保険金は保険会社との事前の契約ですから、止むを得ない結果ではあります。

いいえ、いいえ、なんと実際はこの100万円すら支払われません! なぜなら、自分が加入している保険会社の支払基準だと損害額自体が1000万ではなく500万円ですから、加害者側から支払われた賠償金800万円で既に総額で上回っていることになります。ですから、過失割合に関係なく、保険会社は補償が満たされているという理由で100万円の支払いをしないのです。

★人身傷害保険の請求方法と請求時期を組み合わせた対策

さて、それでは、対策は何もないのでしょうか?
いいえ、ありますのでご安心ください。請求方法と請求時期を組み合わせるのです。

実は、人身傷害保険金には、三つの支払方法(請求方法)があります。①先行全額払、②先行過失払、③後払、の三つです。

通常、保険会社は損害賠償請求前に人身傷害保険の請求をすると、
①先行全額払という方法で、人身傷害支払基準で計算したあなたの損害額全額500万円を先に支払い、その代わり、本来あなたが所有していた賠償請求権を代位取得します。
そして、加害者側から500万×80%=400万円を回収して、100万円を自社負担とします。

保険会社同士、賠償額総額を抑えることがお互いの利益に適いますので、この①先行全額払は、保険会社にとって、最も割安な都合が良い方法です。

三つの内あなたが選択すべきは、加害者側に賠償請求する前に、
②先行過失払という方法で、まず人身傷害保険の請求のみします。
これによって、まず、自己の過失分である500万×20%=100万円をゲットします。
そして、その後加害者側に損害賠償請求をします。これによって、1000万×80%=800万円をゲットします。

この方法で目出度く、100+800=900万円をゲットできることになります。
この対策は、理屈は単純ですが、実際は保険の仕組みを知り尽くした交通弁護士くらいしか知らない、高等テクニックです。

この場合、請求書提出時に、その旨(過失部分につき請求することを)保険会社に伝えて同意を得る必要があります。
後改めて説明しますので参考にしてください。

尚、③後払については、前述した例でお分かりのように、加害者側への損害賠償請求額800万円を受け取った後では100万円は支払われませんので、当然回避すべきです。

保険車傷害危険担保特約

事故の加害者側が任意無保険車(自賠責は加入しているものとします。)の場合で、自分の任意保険の記名被保険者とその家族、または契約車に乗車中の方が死亡または後遺障害を負った場合、当特約から自賠責保険金等を超過した額が支払われます。
ひき逃げによって加害者がいない場合も補償されます。

人身傷害保険に加入している場合は、人身傷害保険の支払が優先されます。

自動車保険には、自分で選択していなくても自動的に付随して付加されている特約があり、当特約は対人賠償責任保険に自動的に付加されています。

自損事故傷害担保特約

自損事故では加害者がいませんので、加害者の自賠責保険や対人賠償責任保険による補償が受けられません。
人身傷害保険に加入している場合は、人身傷害保険からの補償が受けられますが、人身傷害保険に加入していない場合に、当特約から定額での保険金が支払われます。
対人賠償責任保険に自動的に付随して付加されています。

・死亡保険金=1500万円

・後遺障害保険金=50~2000万円

・介護費用保険金=200万円

・入通院医療保険金=1日につき4000~6000円

弁護士費用特約

今やすっかり一般的になった特約です。
自動車事故により損害賠償請求費用(訴訟費用や弁護士報酬)及び法律相談費用を負担する場合に、300万円を限度として保険金が支払われます。

もちろん、依頼する弁護士は選べますが、事前に保険会社に通知をしておくことが必要です。

弁護士費用特約が使えて、示談交渉の難航が予想される場合、もしくは、訴訟を視野に入れている場合は、交通事故弁護士と言われる、当分野の専門弁護士に依頼することを検討しましょう。
日常生活上の被害も補償されるタイプもあります。

ところで、「人身傷害保険」と「弁護士費用特約」は、家族の自動車が加入していれば、家族全員が使えます。
意外に知っている人が少ないのですが、この2種類は、対象の被保険者を自動的に記名被保険者の同居家族及び別居の未婚の子を含んでいます。(人身傷害保険の場合、搭乗外適用を外すことで保険料を安くしているタイプもあり、この場合は支払対象になりませんので、ご注意ください。)

ですから、同居家族所有の1台の自動車保険がこの2種類に加入しているなら、他の同居家族及び別居の未婚の子も、保険金の支払いを受けることができます。
逆に言えば、複数の自動車を家族で所有している場合は、お互いに対象の被保険者を同居家族及び別居の未婚の子としている補償内容は、重複(人身傷害保険の場合、お互いが搭乗外を補償対象としていることによる重複)することになります。

この重複を削除すると、年間の保険料は約3000円節約できます。
たかが3000円とはいえ、何も意味がないお金を負担する理由はありません。

是非、一度同居家族全員の自動車保険を確認してみてください。

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