第1話「転換契約、資産搾取の仕組み」

転換契約とは、通称「下取り」とも呼ばれているが、現契約を解約し、その時発生する解約返戻金を、新たに加入する契約の保険料に充当する契約のことである。

こう書けば、車の「下取り」を連想して、何も疑義を感じないかも知れないが、車と保険では、根本的な違いがある。車は、新車の方が常に品質に優れ、きれいで快適である。
しかし、転換によって新たに締結する保険は、常に積立部分が減って掛捨て部分が増え、保険料は、契約年齢が上がった分高くなり、予定利率は前契約より確実に下がるので、積立部分の将来受取金額は必然的に下がる。つまり、転換は、契約者の損失を生む制度である。

実は、積立型の生命保険は、保険機能を持った価値の高い資産商品であり、とりわけ、高金利時代に契約した終身保険や養老保険は「お宝保険」と言われて、数ある金融商品の中でも、抜きん出た商品価値を持っている。その「お宝保険」を解約して掛捨て保険に切り換えるのが、転換契約の実体である。

具体例で補足しよう。(2014年6月の某保険会社のデータを利用して説明する。)
契約年齢30歳、60歳まで30年間の支払期間で、死亡保障1000万円の保険に加入する。
積立型終身だと、月保険料18380円、払込総額約662万円。掛捨て型だと、月保険料3810円、払込総額約137万円である。
30年後、60歳時、積立型終身の場合、その時点で解約すると、解約返戻金702万円が返ってくる。702-662=40万円の収支黒字である。掛捨て型と比較すると、差引き40+137=177万円の収支差額となる。もちろん、解約せずに、死亡保障1000万円をそのまま維持しても良い。

さて、積立型終身契約から、15年経ったとしよう。45歳になり、子供は来年高校受験である。今後、子供の教育費は高額になり、本人の生活習慣病のリスクは高まっている。
ここで保険会社は、終身保険金額を1000万円から300万円に圧縮し、その代わり、定期保険金額を2700万円付けて、死亡保障を合計3000万円として、入院その他の医療保険特約を付けて、月保険料28000円の提案をしてくる。
なるほど、死亡保障は3倍になり、病気への備えもできて安心である。保険料も1万円までは上がっていない。一見、タイムリーな提案のようにも思える。

では、整理してみよう。
払込保険料は、45歳までが331万円、45歳以降が504万円、計835万円である。仮に、60歳時点で解約すると、解約返戻金210万円が返ってくるので、835-210=625万円の収支赤字である。結果的に、当初の40万円の収支黒字と比較するなら、差引き665万円の赤字(金利を含めない現金ベースでの損失)となる。
これを全く正反対の立場である保険会社サイドから見ると、差引き665万円の黒字となる。

何故、保険会社が転換契約を勧めるのか、お分かりいただけたと思う。

因みに、私が支援した第一生命転換契約裁判の被害者Kさんの場合、当初契約は、契約年齢27歳、55歳まで28年間の支払期間で、積立型終身死亡保障1000万円、月保険料10240円、払込総額約334万円の保険だった。最終的な収支は、1000ー334=666万円の黒字だった。
ところが、その後4回の転換契約によって、65歳まで38年間の支払期間で、終身死亡保障該当額169万円、月保険料41135円(更新後10年間107060円)、払込総額約2265万円に変貌した。最終的な収支は、2265-169=2096万円の赤字。
最初の契約と比較すると、差引き2762万円の損失となる。
空想の話ではなく、現実の話である。転換契約の恐ろしさ、罪深さがお分かりいただけたと思う。

転換契約に騙された人は多い。転換契約は、ほぼ100%、一方的に保険会社が得をし、契約者が損をする内容なので、契約の過程で、生命保険会社が契約者を騙す以外、ほぼ成立しない。
因みに、裁判中、第一生命は、転換契約について次のように主張している。
「契約者、被保険者の年齢や新しい商品内容に応じて将来の保障を見直し、よりニーズに合った保険に見直すために転換契約は利用されており、一方的に加入者に不利であることはあり得ない。」

また、第一生命が言うところの「よりニーズに合った保険」とは、被害者Kさんの場合、具体的には「堂堂人生・らぶ」と言う。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク